中央大学創立130周年記念論文コンテスト
受賞報告
テーマ「中央大学の未来へ〜私の提言」

田 口 昭 夫

 このたび創立130周年を祝う「ホームカミングデー(10.25開催)」席上で題記表彰の栄に預かり、幹事長はじめ当日参加の会員各位からの要請により、その論文(4,000字以内)の要約を報告することになった。
 第489号「学員時報」に“特別企画「論文コンテスト」募集要領”が発表され、日頃の私の考えをまとめた次第。
 <提言要旨>
 これまでの伝統、世界的な「グローバル化」「ユニバーサル化」「市場化」のトレンド、日本の大学を取り巻く現状認識を整理した上で、今や国公私立を問わず「自己責任」での改革が求められ、生き残りをかけた競争が激化し、学生の募集や選抜方法、入学後の指導や教育・研究内容にとどまらず、管理運営組織から財務・経営方針まで全面的な見直しを迫られている大学は、いかに人々に存在感のある大学運営に徹し、他大学との連携・差別化を明確にして、存続の危機に打ち勝っていくべきかの視点から、今後の総合企画委員会での主要な議論として、大きく以下の4点を提言とした。
(1)「いじめ・家庭崩壊」「動機の見えない殺人」等、あまりにも多く、国民意識調査結果でも「“個人志向”の台頭による家庭や地域の教育力低下」を指摘、また道徳教育の現状(教職の答えを見抜くゲーム)を踏まえ、建学の精神である「実学」を基調として、小学校までには社会道徳や思いやり等のしつけ教育、中学校では体力づくり(自己スポーツの発見)、高校では文武両道(進路決定)、大学では学問研究・スポーツ等への道を高いレベルできわめていく、そうした育成プログラムを明確にして、総合学園としての一貫した人間力形成、中大ブランドの高揚(質実剛健)が望まれる。
(2)学部の枠を超えて履修可能なFLP(ファカルティリンケージ・プログラム)は、想定外に発現する諸事情に対応できる実践型人間教育であり、さらに今日的課題に対するプログラムを拡大することや、大学間単位互換制度やボランティア・インターンシップ等の実践評価にも力を入れ、多様な学修機会を通じて大胆な人間力形成を進めてほしい。
(3)少子・高齢化社会の進展、生涯学習意欲や働きながら学ぼうとする意欲に応えるべく、専門職大学院や社会人を対象とした各種講座・学術講演会及び通信教育の充実策として、地方創生事業と連携し、高度情報システムを活用したサテライトオフィス等の展開による裾野の拡大、履修単位制導入による達成感の醸成等も一つの方策である。また、その拠点として、例えば後楽園校舎周辺に都心王国を建設すること、さらに、先端技術の導入を視野に入れると、市街地再開発事業等を活用しての施設整備も一つである。
(4)大学間競争に勝ち残るためにも、学問研究だけでなく、スポーツ分野の振興に注力することも極めて重要で、大学の名声を高め、受験生確保や法人・学生・保護者会・学員会等関係者の“絆”に大きく貢献している。スポーツ活動を通じて養われる「強い意志」や「忍耐力」「他人を思いやる気持ち」「組織を重んじる気風」等々、集団の中での良好な人間関係、コミュニケーション力の育成に大きく寄与し、社会も企業も、その闊達明朗な人間力を期待しており、履修単位への配慮も検討されたい。