江戸から届いたお屋敷のお金三百両を懐にお屋敷に届ける筈が新地の遊女梅川に会いたさに行きつ戻りつする忠平衛、そのときワンと一声、犬に吠えられて決心する運命の分かれ道。一度は思案二度は不思案、三度飛脚。戻れば合わせて六道の、冥途の、飛脚と・・と大夫が静かに語る近松の名作冥途の飛脚「淡路町の段」の幕じり・・。
大好きな文楽の一場面である。その後、公金横領の封印切りそして大和への逃避行の展開を識る観客のため息。
平成12年9月16日「仮名手本忠臣蔵」を手始めに芝居を観る会は、足かけ15年、文楽28回、歌舞伎4回、オペラ「カルメン」など二回。毎回、会員に呼びかけて41会が
10人前後、小金井支部や友人、知人をあわせて20人の方々が参加した。当時50 代半ばで定年後の夫婦観劇のきっかけになってくれたらと芝居を観る会を始めた。
平成21年9 月、「伊賀越道中双六 沼津の段」を竹本住大夫、「艶容女舞衣 酒屋の段」を豊竹嶋大夫で文楽屈指の名作を二人の名人の熱演に参加者全員が感動した。両人とも人間国宝であったが惜しまれて引退している。
そして、その年12月41会忘年会が四谷荒木町で開いた時に、当時の幹事長長内先生ご夫妻ほか10人ほどの会員が10時過ぎまで残って、まだ若手だった豊竹靖大夫(中央大学文学部卒)さんを励ました。今日では中堅大夫として人間国宝空席のあとを埋めるべく日夜猛稽古に励んでいる。毎年4回の東京の公演にできるだけ参加して激励してあげて欲しい。窓口は太田澄子さんになっている。
古希を過ぎたこの頃、遠くの旅行に出かける前に近くの小旅行、芝居見物に出かけませんか。そして皆様の目に24才の忠兵衛の仕業がどう写るのでしょうか。 (小森輝於)
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