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人生の最高峰へ

大木田 守


 「人生とは何かを考えた」
 このタイトルは、作詞家・秋元康氏の講演会のテーマである。
 私は中央大学ホームカミングデーの実行委員長を6回行った。その時、後輩で作詞家の秋元康氏に講演の依頼をした。私はその時話題になっていた「AKB48」をテーマにと考え、事前の打ち合わせを行った。
 すると秋元氏は「『私は人生とは何かを考えた』をテーマに話したい」と。それではそのテーマでお願いした。
 当日、会場は満員の盛況。秋元氏は人生には運も大事と、参加者とじゃんけんで、“運試し”をするなど会場は盛り上がった。
 そして美空ひばりさんが人生の最後に歌って大ヒットした「川の流れのように」を作詞した時のことを話した。美空さんが病気から回復した後、半年にわたって打ち合わせをしながら「人生とはなにかを考えた」と。
 
 知らず知らず歩いてきた
 細く長いこの道
 振り返れば遥か遠く
 故郷が見える
 でこぼこ道や曲がりくねった道
 地図さえないそれもまた人生
 ああ川の流れのように
 ゆるやかにいくつも時代は過ぎて
 ああ川の流れのように
 とめどなく空が黄昏に染まるだけ
 
 私の好きな歌である。よく口ずさむ。
 先日、テレビを見ていたら、石原裕次郎さんの最後の歌となった「わが人生に悔いなし」の誕生秘話が語られていた。作詞家のなかにし礼さんが、入院中の石原さんに依頼され加藤登紀子さんに曲を依頼したことなど。この歌も好きである。私が時々思い出す詩がある。
 
 越え越えし
 見上げて見ればまた峰の
 人生は限りなき
 峰の踏破かな
 
 人生はいくつもの山を越え最高峰をめざすドラマである。
 私も来年は八十歳になる。かつて作家の武者小路実篤さんに会った時、こんな色紙をいただいた。
 
 大地の滋味 を集めて 人間に捧ぐ  八十五歳  実篤
 
 いよいよ人生の最高峰への最終コーナーに入った気がする。
 歴史学者であるトインビー博士のモットーは「さあ、きょうも仕事を続けよう」であると聞いたことがある。
 武者小路さんの「人見るもよし、人見ざるもよし、されど我は咲くなり」
 恩師は「厳として富士の大山無敵なり」だまって動かぬ富士を我が胸中に作ることだと語った。我が心の富士の最高峰へ、きょうも日に日に新た、また新たなり。