会員だより —歌代雄七—
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2026年6月
随想135 玉ネギ
野菜で好き嫌いがはっきりしているのが玉ネギ。昔々のエジプトでは貧しい人がパンとビールと玉ネギの昼食だったと、古代ギリシャの時代の歴史家であり、作家のヘロドトスが著している。その古代ギリシャでは、オリンピック競技への出場をめざす運動選手にタマネギを食べさせていた。また、古代ローマの剣闘士はタマネギの汁でマッサージをしてから闘技場に入場したと言われている。
そのタマネギ、メソポタミアの時代に存在していたことは書に記されているが、それを欧州全域に広めたのは、タマネギ好きの古代ローマ軍だったという。それは古代ローマ軍が侵攻するにしたがって、タマネギの耕作地が増えていった様子で分かる。背景は敵と戦う力と勇気を高める作用があると信じられていたタマネギやニンニクは、ローマ兵にとっておいしいだけでなく、軍事上も有用な食材だったのだろう。
この玉ネギは、ネギ属の一種で、ニンニク、エシャロット、ラッキョウなど700種あまりの仲間と一緒だ。感覚を強烈に刺激するタマネギとその仲間は、歴史的に悪霊や吸血鬼、更にはヘビ、トラ、ペスト、風邪にいたるまで、ありとあらゆる厄介者を撃退する、と欧州では長く信じられてきた。
一方、玉ネギ自体も古代ローマの戦士同様に「戦う戦士」だ。傷つけられると細胞が損傷したことを察知し、ある種の酵素を出す。この酵素は、ふだんは無害の化合物だが刺激を受けて、におい成分や目に痛みを与える分子を大量に放出する。これは動物などによる攻撃から身を守るために進化させた機序なのだろう。動物の大半は、玉ネギから発散される強烈な忌避剤で二度と食べてみようとしなくなる。
具体的な機序は、タマネギをナイフで切ると発生する催涙物質は、SYN-プロパンチアール-S-オキシド。切って数秒もしないうちに、この物質が目の角膜に飛んできて神経の末端である神経終末を活性化する。刺激物質を検知した神経終末は、涙腺にシグナルを送って涙を分泌させ、侵入物を洗い流そうとする。
一方、タマネギやニンニクの汁は、あまり強くない抗生物質でもある。米国の南北戦争の時代には、銃によって負った傷の治療にタマネギの汁はよく用いられていた。北軍のグラント将軍はタマネギがなくなったときに、ワシントンの陸軍省に「タマネギがないかぎり、私の隊は動かさない」という怒りのメモを送っている。もちろん陸軍省はすぐに荷車3台分のタマネギを将軍に送った。因みに彼は18代大統領に就任している。
またニンニクは第一次、第二次世界大戦中にも殺菌に用いられた。
タマネギは細菌や真菌の成長を抑制し、その抗酸化物質は我々を、がんや心臓血管疾患から守ってくれる。タマネギに含まれる各種の化学物質は、アレルギーや喘息から糖尿病まで、多くの疾患を軽快させることがわかっている。ビタミンやミネラルにも富んでいる。
振り返って、普段の生活の中で単なる食材として見ても、タマネギなしの暮らしは考えられない。またタマネギは世界各国の料理に欠かすことのできない食材だ。海外と言えば、筆者がスペインを旅した折の生の玉ネギは、地中海沿岸で栽培されたもので甘い品種だった。この地での諺で「(恋しい)あなたとならばパンと玉ネギ(だけでも耐えるわ)」とある如く、粗食の代表であったのだろう。また、ドン・キホーテの小説にも玉ネギがしばしば登場して貧しさを表現する場面で使われている。
尚、日本への到来は江戸末期で、当初は観賞用であったが食用としては明治4年、札幌で試験栽培されてからだと言われる。血液サラサラ効果がありと言われているが生食であれば、1日50~70グラムにとどめるべきだとされている。通常の大きさでは1個200グラムであることから1日に、4分の1個が生食での目安だろう。
さてさて、筆者は生玉ネギのスライスに鰹節を掛け、醤油を垂らして食すのが大好きだ。
その昔、ゴルフ場での昼食は主食と併せオニオンスライスを必ずオーダーをしていた。最初のラウンドの疲れ解消と午後からのスコアが良くなることを願っての「玉ネギスライス」だが、その後、力が漲るのか、「ダフ」ったり、「フォア」と先の組の人達に注意を促す叫びをキャディーさんが発したりすることになるのだが……。スコアは悪くなれども無二の友だった玉ネギ君、君は我が永遠の友だョ!
2026年5月
随想134 美術館が…
欧米では、美術館や博物館が自ら所蔵品を売却する動きが活発化している。
この動きが見られ始めたのはコロナウイルス禍で、絵画や彫刻品が運営費に充てられた。その後も資金繰りの関係で売却が続いている。つまり所蔵品は、美術館や博物館にとって貯金箱か預金通帳の如くの存在となっている。
売却自体は昔からあったが、「コロナ」以降、来場者数が激減して多くが経営難に直面したことから背に腹は代えられない環境となった。もともとは所蔵品の破棄や譲渡、売却は厳しく制限されている。国際博物館会議では倫理規定で処分対象要件を定めている。それは修復不可能なもの、過去に窃盗や違法取引などの履歴があるもの、更に美術館や博物館の収集方針に合致しなくなったものとしている。また所蔵品に就いては「換金可能な資産として扱われるものではない」とし、譲渡や売却で得た資金は原則、新たな作品購入に充てるものとしてきた。これら倫理規定には法的拘束力はないまでも、影響力は大きいものがあった。
例えば、英国では博物館協会が金銭的な理由での所蔵品の処分を禁止している。違反した場合は会員資格を停止する。更には助成金の申請ができなくなり、所蔵品の貸し借りができなくなる厳しい制裁が待っている。米国でも美術館館長協会が同様の規定を設けていた。しかし時代に即して2020年には、違反しても制裁はせずに、売却で得た資金を所蔵品の保管や修復などを目的とした場合は認めると決議している。
振り返って所蔵品の売却に厳しい姿勢は、所蔵品には寄贈も多く、その目的は寄贈者が長く保存、活用をしてもらうことを期待してのことが背景だ。美術館側が無料で受け取った作品を売却して、収入を得ることは想定していない。加えて、公益に資するとみなされるから税の減免措置を享受する施設も多い。安易な売却は社会の信用を損なうものだろう。
一方、かつてはお城だったパリのルーブル美術館、観光客の増加で見学は苦行に近い状況、それに加えて館内は老朽化への対応が必要となっている。こうした状況から館内拡張などが計画されており、その改築総費用推計は7~8億ユーロ(約1150億円~1300億円)だ。その手当てとして現在の入館料は22ユーロ(約3600円)だが、今後はEU域外のからの観光客に対しては二重価格制の導入も考えている。完成後は、年間入場者数を年間1,200万人を視野に入れている。1980年代は400万人程度、2024年は約870万人から比べても驚異的人数を見込んでいる。
扨て、欧米では私立や寄付金で運営されているケースが多い。一方、日本では、企業がバックグランドについている出光やサントリー、三菱一号館などの美術館等はあるにせよ、国公立が中心だ。昨今そこでの課題は収蔵庫不足だ。その対策としては破棄、寄贈、売却が考えられるが明確なルールがなく、恣意的な売却を避けるためには、文化庁が音頭を取っての指針の早期整備が必要だろう。
筆者は、花鳥風月に興味があるわけではなく、ましてや美術に就いては無知そのもの。
そうした中だが、かつて拙著の取材や観光の合間に大英博物館やニューヨークのメトロポリタン美術館、近代美術館、更にはパリのルーブル、オルセー、サンクトペテルブルクのエルミタージュなどへ足を向けた。見学はミーハーの域よろしく「行ってきました!」感覚だった。当時はその経済的面での困窮状態を知らずして、一部を除いて入館料が高い高いと叫んでいたものだ。もう訪ねることはないだろうが、若し行く機会に恵まれたなら、当時の気持ちを懺悔してドネーション・ボックスに、気持ち程度だが落としてくるつもりだ。
2026年4月
随想133 蚊
この4月頃から「蚊」は蠢き始め、10月頃まで人を悩ます。
様々な感染症を媒介して、地球上でもっとも多くのヒトを殺す生き物でもある。
その昔は寝る時には蚊帳を吊って、睡眠時での蚊の攻撃を防いだものだが、その蚊帳の中で騒いで親に叱られたことが思い出される。今月のテーマは、皆さんに嫌われる「蚊」を題材としてみたい。
では、本筋に入る前に、「蚊」の文字を分解してみよう。
「虫」と「文」に分けられ、意味を表す文字と音を表す文字とで成り立つ形成文字だ。蚊は飛ぶときの羽ばたきの回数が、1秒間に500回。チョウが20回、ミツバチは200回とその差は歴然、日本人には耳障りなその羽音がブーン・ブーンと聞こえる。
それ故、虫編に「(ブーン)文」となった由。
扨て、その「蚊」による媒介で近い将来、デング熱の蔓延が予見され、その結果は今から1世紀前に下火になった結核と同様に死者が発生するのではと、専門領域の人が心配している。この背景には温暖化がある。温暖化で生息域が広がり、例えばデング熱のウイルスを持つ人の血を蚊が吸い、他の人を刺すことで蔓延することが考えられる。
通常デング熱による発熱や頭痛は5~7日で治まるが、まれに重症化し死に至るケースがある。世界では毎年約4億人が感染し、約20万人が死亡しているとWHOでは推計している。因みにマラリアなどを含めると年間83万の人々が、蚊が原因で命を落としている。
国内では感染者は2024年で400人との数値はあるが、海外で罹患し帰国して死亡したケースが発表されている。罹患者が多くなれば当然、行動制限はもとより都市の封鎖がコロナ同様に考えられる。2024年8月には北海道の北端部と同じ緯度に位置する米マサチューセッツ州の一部で、蚊が発生しやすい夕方以降、外出自粛を求める勧告が出た。
なお、日本にはデング熱ワクチンがなく、海外のワクチンを使用すると感染したことがない人は重症化リスクが高まると言われており、現状では有効策がない状況だ。またデング熱などの感染症を媒介するネッタイシマカの8割以上が殺虫剤への耐性を強める遺伝子の変異をもっている。
そこで昨今は、蚊対策として殺虫剤以外の方法を見つけようと企業は努力している。例えば、蚊の足に馴染むシリコンオイルの開発を進めている。蚊は細かな鱗や毛で覆われ、水には濡れにくいがオイルだと濡れる。クリームを塗った肌の上では足が引っ張られる力を感じ飛び去る事実が確認されている。つまり蚊が肌に止まりにくいオイルによるクリームの開発だ。また洗剤用の界面活性剤を使い蚊の羽が濡れて飛べないスプレーも開発されている。
他に、青色光を当てると体内で活性酸素が発生し、細胞にダメージを与えることで殺すことが可能となる。このように「薬」を使用しない駆除の研究が盛んになっている。
然し、蚊は生態系の中で重要な役割を担っている。蚊が若しこの世からいなくなったら蚊を食べている蝙蝠や蜻蛉が激減するだろうし、生態系のバランス・連鎖を崩す事になる、また糖尿病患者らが血糖値を測るために採血する際の針は、蚊の針が参考になった。更に蚊が血を吸うときに麻酔の役割を果たす唾液等など、こうした蚊の特徴ある器官を研究する材料がなくなってしまうことも考えねばならないだろう。
耳元で、かすかな蚊の羽音を聞けば叩くが逃げられる。彼らの飛行速度は我ら人間たちの歩速より遅い時速1.5~2.5kmだ。それなのに叩き落せぬことに切歯扼腕する。その一方で、彼らの寿命は約1か月である。彼らが逃げることで、寿命を全うすることを思えば功徳を積んだ気持ちにもなり、心満意足の世界に浸たることになる。
誰が聞いても、おかしな心象だと思うだろうが……。
2026年3月
随想132 金
金(ゴールド)と言えば金持ちが所有するものとのイメージが強かったが、昨今は市井の人々が小遣いを積み立てるようにして、1か月数グラムずつ購入するケースが多くなってきた。筆者には遠い話題と思っていたが、最近、積立購入の話を頂き身近に感じるようになってきた。就いては、今月のテーマは、その「金」にしてみよう。
扨て、その金はいつ頃からあったのだろうか。
ご存じの通り、紀元前3000年前から3000年程続いた古代エジプトのファラオ(王)の墓から金の装飾品が見つかっている。一方、現在発見された中で世界最古の金貨は、紀元前670年ごろに誕生している。鋳造されたのは現在のトルコ西部のリディア王国で、メソポタミア時代に栄えたヨーロッパとアジアを繋ぐアナトリア半島リュディアで発見された。その地は現在のトルコ西部で、貨幣は金銀合金の「エレクトロン貨」と呼ばれる直径1cm強の円形、表面には王の象徴であるライオンの顔が描かれていた。
時代が下って、現在の金事情は、となると値上げに次ぐ値上げ状態だ。
その背景は、各国特に新興国の中央銀行が金買いに走っている。勿論、個人の買いもあるが、中国、ロシアの中央銀行の買いは尋常ではない。この現象は資本主義圏とのデカップリングも大きく影響している。加えて米国の債務が積み上がり、ドルへの信認が揺らいでいることから、ドル資産から金へ乗り換える各国の中央銀行が増えているからでもある。
更に供給サイドは南アフリカなどを中心に毎年、世界の鉱山の生産量が3千トン前後で推移していることが金価格を押し上げる要因となっている。つまり、需給バランスに依る値上がりだ。もう一つバランスの崩れの要因は、今まで金に関心の薄かった富裕層を含めた米国人が自国通貨ドルに対する意識変化から、金貨や地金を購入することが金高騰要因だ。因みに、「地上在庫」としては変わらないが、リサイクル供給力は毎年1,200トン前後だ。
では、地球上にどのくらいの金が出回っているのだろうか、つまり地上在庫としては、約22万トンだ。この数値を用途別に仕分けると宝飾品で45%、投資分野で22%、中央銀行保有が17%、その他で15%だ。
扨て、黄金と言えばエジプトで発掘された「ツタンカーメンの黄金のマスク」が、つとに有名だが、製作されたのが紀元前1300年で、現在はエジプトの国宝とされている。それは23金で作られ、重さは高々約11kgだがその「価値は300兆円」とされている。
一方、その王が眠っていた棺は110kgの黄金が使われていたという。さもしい筆者は、ついつい金額に換算したくなる。昨今の金価格はグラム当たり2万7千円超で弾くと、棺だけで単純計算では約30億円超。盗掘者の心理が分からないわけではないが……。
因みに、2000年超ほど前の日本は弥生時代、欧州では古代ローマ帝国だった。
その時代、元老院などを含めた高級官僚を始め限られた人々が着用した外出着があった。肩から半身をまとうもので名称は「トガ」と称し、金1オンス(約28g)に相当したそうだ。一方、現在の日本に於いてハイソな人々が高級紳士服店で仕立てる服は約50万円ほど、欧米ではその5割アップと仄聞した。現在の金価格グラム2万7千円前後を考えれば、その約80万円は1オンス前後となる。ここ数年、金価格暴騰の事実はあるが、金の価格は時代を映す「価値」のバロメーターであり、パラレルなのだろうか!
扨て、金塊を側に置くことも、目にすることもない筆者は「金」とは全く縁がない。その昔ご近所にネックレス、腕輪更にネクタイピンなど金色で身を固めていた成金趣味のおじさんがいた。何とも軽薄な方との思いで眺めていた。そうそう、更にそのおじさん、口を開ければ上下左右ともに、奥から3番目か4番目辺りまで金歯で固めていた。まるで獅子舞の獅子が安っぽい金で固めたようなお人だった。今思えば、その方の深層心理が知りたいと強く思うところだ。そういえば、筆者30代の頃、歯医者の勧めで奥歯の1本、金を被せたことがあった。そうだ、次の年金までお金に不自由をしたら、この金歯にご活躍願うことにしようか……。
2026年2月
随想131 格言
戒めや処世訓、金言、箴言など人生の真理を簡潔にまとめたものを格言と称しているが、我々の年齢ではこれらを体現し、またこれらを周りの人に宣い、諭す年齢領域となった。しかし、それはとかく独善的となり、これらを聞かされた相手が如何なる心境で聞いたかを確認することなく……。
今回のテーマはその格言だが、人生の酸いも甘いも十分噛分けたあなたには一般的な格言を示すことは大変失礼なこととなる。就いては、老後のスリルと頭のトレーニングとなる「株の売買」を中心とした金融市場での格言をお示ししよう。今月の小紙をご覧の方々で投資を控えている方には、役に立ちませんので、今月は飛ばして、来月のテーマをお待ちください。
ここから改めて読み始める方は、投資で修羅場を歩んでこられた方々でしょう。
昔から伝わる金融市場での「格言」は、機械による高速売買が増えた今日でも、通底するものがある。相場のリスク要因はいつの世でも意識すべきであろうし、時代を潜り抜けてきたこれら格言は、人生を歩むうえでも、けだし至言だろう。
〇 人が行く裏に道あり、花の山
多くの人が行き交う道ではなく、人があまり行かない道にこそ目的の「花」がある。と言う意味だが、人気の株は最早「乗る」には時期が遅いとも解釈できようか。その周辺にはこれから伸びる株があるよ! それを探せと……。
〇 卵は一つのかごに盛るな
投資資金を一点集中するのではなく、複数の対象に分散することが大事だとの教えだ。例えば株式だけではなく、債券、金、不動産などリスク分散を為して政治、経済の環境変化に対応できる環境づくりが大事だとのことだ。
〇 「もう」はまだなり、「まだ」はもうなり
上昇相場、「まだ上がると思っていても「もう売り時」かもしれず、下落相場で「もう底値」だと思っても「まだ下がる」かもしれない。同じような意味のことを、米国の著名な投資家ウォーレン・バフェット氏は「他者が貪欲なときに恐怖心を抱き、他者が恐怖心を抱いているときに貪欲であれ」と説いている。
〇 頭と尻尾はくれてやれ
相場のピークやボトムを予想して売買に成功し続けるのは、不可能に近いと言われている。つまり相場の最も安い水準や高い水準を確認してから、その水準から少し高くなったり、安くなったところで売り買いするという格言。
〇 二度に買うべし、二度に売るべし
一括投資で大きなリスクを背負うのではなく、同一銘柄でも様子を見つつ分散して購入したり、販売をすることの慎重さが必要だとの意味だ。
〇 利食い急ぐな、損急げ
相場が上昇する中で早めに利益を確定すると利幅が少なくなるため、急ぐ必要はない。一方、下落相場では損失を早めに確定しないと損失が拡大する恐れがある。つまり利益を最大化し、損失を最小化することの意味だが、「そんなことは分かちゃいるけど!!」の世界だが。
他にも投資判断の助けになる格言はある。
〇 遠くのものは避けよ。
〇 眠られぬ株は持つな。
〇 買いは技術、売りは芸術
〇 相場は明日もある
〇 相場は相場に聞け
〇 落ちるナイフは掴むな。
等などだが、投資家の貴方には意味はお分かりのことだろう。
扨て、筆者の株式投資歴は半世紀超。最初は自社の持ち株会で株に触れて、1年と経ずに種々の株に手を染め、爾来この80歳まで続いている。今後も、三途の川を渡りながらも、株の情報を集めることに余念が無いだろう。
扨てさて、筆者の最大の失敗は老年に差し掛かっての出向時、退職金を受給した。その内の半分は企業年金積み立てに回した。残りは、当時上場を果たした米国システムソフト会社の日本法人の株に、全額をつぎ込んだ。
その後10年程過ぎた時点では株価は10分の1。そのことを当てこすってか、今でも女房殿は時折「一生懸命働いたのに、退職金は少なかったわね!!」とチクリと、宣う。
針のむしろとは、こうした場面を指すのだろうか。
「チクリ」の度に、体が覚えてしまったのか、自然に頸が垂れ、一陣の風が過ぎるのを待つ自分が、何とも情けない。
2026年1月
随想130 和牛
街中を歩いていたら、どこからともなく牛肉の香ばしい匂いが風に乗って鼻孔をくすぐってきた。正月は和食の月だろうと思いつつも、あまりにも単純だが、今夜の主菜は牛肉と決め、連れと一緒にスーパーに飛び込んだ。陳列棚には、黒毛和牛、国産牛、輸入牛肉といろいろ並んでいる。まさにオーバーに言えば、光彩奪目。
ライトが当たるそれぞれは、わたしを選んでとばかりに輝いている。
幾つかをチョイスし、タレ、野菜などを併せカートに入れてレジに向かう。
……そうだ、今月の随想テーマは「牛肉」としよう。
扨てさて、そもそも和牛とは何だろうか。
もともとは日本の牛は、農耕用だったが、1950年代以降に肉用として、肉質などに優れた種牛を遺伝的に選抜し、肉が霜降りになりやすいように餌を工夫してつくりあげた日本の誇るべき「逸品」だ。1960年代から雄牛の精液を冷凍して雌牛に受精させる方法が始まり現在まで続いている。また80年代、能力の高い父牛を選んで品種改良を進めてきた。更に、2016年以降は遺伝子分析も活用して、種牛を選ぶようになった。つまりそれは、黒毛和種などの4種類とそれらをかけ合わせてできた交雑種のことだ。
一方、国産牛とは和牛とは別のグループ分けで、日本で育った牛のことだ。雌が牛乳を出すホルスタインの雄やホルスタインと和牛の交雑種を「国産牛」と表示することが多いようだ。因みに和牛には他に褐毛和種、日本短角種、無角和種がある。その和牛の触感の特徴は、食べた後に口に残る脂ぽっさがあまり残らないのが特徴だ。それは脂肪の成分が口に入れると体温でさっと溶けるからだ。
日本で肉を供給する肉用牛の飼育頭数の95%以上が黒毛和種だ。これほど多く飼われている理由は、肉の中に脂肪がたまりやすく、肉が柔らかくなっているからだ。それは赤い筋肉の中に白い脂肪が散らばっている、所謂「霜降り」状態をいう。この霜降りは和牛、特に黒毛和牛の特徴だ。
外国の牛は、品種改良や飼育方法の工夫で脂肪を多くしようとすると皮下脂肪までが増え、食べられる部分が少なくなる。その点、黒毛和種は霜降りを多くしても、皮下脂肪が厚くならない、世界的にも珍しい特性をもつ。
そうした中で、有名な種牛としては、兵庫県で生まれた「安福号」を岐阜県が1981年に購入して、93年に病気で死ぬまでに約4万頭の子牛を残したとされている。
霜降りを多くするためには、たんぱく質の多い餌や稲わらなどビタミンAの少ない餌を与えるとサシが入りやすいことは研究成果として知られているが、機序はまだわかっていない。
因みに、牛の体重は人間の約10倍、その体重を支える4本の脚が地表面に接している面積は、ヒトの大人の両足の靴裏とほぼ同じだと言われている。
世界には、牛肉料理は多種多様だ。
牛丼、すき焼き、牛鍋、しゃぶしゃぶ、ステーキ、ボルシチ、ローストビーフ、ビーフシチュー、ビーフストロガノフなどなどいろいろだ。
毎日これらの料理を食していたら、心臓疾患系の罹患は間違いないだろう。
筆者は毎日でもいいのだが、破産を覚悟せねばならぬからことから、1か月のうち牛肉料理は数回だ。
なのに、現在、心臓疾患を患っている。家徒四壁の中で一汁一菜の日常、何故こんな不条理がまかり通るのだろうか。
因みに、日本での死因はご案内の通りがんが1位だが、2位は先進国ではトップの心臓疾患だ。日本でも近いうちに心臓病がトップに躍り出るのは間違いない。