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2026年10月27日(火)
 あざみ


 夏が去り、秋風が吹きはじめた野辺や路傍を紅紫色に染める小さなアザミの花。心に秘めた強い意志を表しているようにも見える。
 アザミとは、約250種あるキク科アザミ屬の総称で、うち日本に自生しているのは70~80種。なかでも秋咲きがもっとも種類が多く、代表的なものにフジアザミやノハラアザミなどが挙げられる。
 アザミは古くから身近な花として親しまれ、食料としても活用されてきた。江戸時代の百科事典「和漢三才図絵」(1712年)には「根を併せて如菜(じょさい)として食う。はなはだ美なり」と記されている。また江戸の町を席巻した園芸ブームはこの花にも及び、初夏に咲くノアザミを改良した園芸品種が5品種、黄色系のもの6品種が当時の図譜に描かれている。

  杉むらの秋の日うとき下草に 心つよくも咲くあざみかな

 明治の俳人・歌人の正岡子規が詠んだアザミの歌。孤独でどこか寂しげな中にも、秘めた強さを持つアザミの花に思いを寄せる日本人の心情が投影されているかのようだ。

 あざみといえば、横井弘・作詞、八島秀章・作曲の「あざみの歌」が思い出される。そしてこの歌の歌碑が霧ヶ峰八島湿原にある(上の写真)。当初、あざみの写真とともに歌詞を冒頭に掲載しようと考えたが、作詞の横井弘が死亡したのは2015年でまだ著作権の有効期間内であることに気が付いた。それで著作権有効期間内の歌詞を掲載するにはどのくらいの費用が掛かるものかと考え、JASRAC(日本音楽著作権協会)に問合せてみた。その結果、掲載方法について詳細な個別審査を受け、非営利団体であっても、利用期間に応じて年額30,000円か、月額3,000円の支払いを要するという。とてもそんな費用を払うことはできないので、掲載は諦めました。世の中には必ずしも著作権料を払わないで無断掲載していると思しきサイトがたくさんあるのに、正規の手続きをしようと思うと大変な額を求められることが分かり、大分勉強になりました。

 雪洞(ぼんぼり)のようにも見えるあざみの花は、ひとつの花のように見えるけれど、実はたくさんの小さな花が集まった筒状花だ。筒状花はすべて両性花で、花色は普通は紅紫。
 ノアザミの園芸品種であるハナアザミは、花つきがよく、色も紅、ピンク、紅紫色など豊富で鮮やか。6月~10月に開花し、庭植えや切り花などにされる。現在では紅色系統だけになってしまったが、江戸時代には黄色系のものもあったらしい。
 葉に棘があるのがアザミの最大の特色で、概して大型で羽状に裂けており、縁には切れ込みがある。
 野原や荒れ地などに生えるヒレアザミは、高さ70~700cmで通常は紅紫色をしているが、まれに白色もある。花期は5~10月。(上の写真は蕾の状態)
 オニアザミは、茎が太く、花も葉も大型。その容姿から鬼の言葉を冠してオニアザミと呼ばれる。 語源ははっきりしないが、花に魅かれて触ると葉のトゲに刺される。つまり、「あざむく」が音韻変化してアザミと呼ばれるようになったという説がある。
 学名は、Cirsium。別名として、阿佐美(あさみ)、千針草(せんしんそう)、眉作花(まゆつくりばな)、眉刷毛(まゆはけ)など。
 キク科アザミ屬の多年草。北半球の暖帯、温帯に分布する。
 生命力の強い花で、山地や河岸、海岸、道など、いたるところで見ることができる。花の先端の種のように見えるものから綿毛(冠毛)が出て(右上の写真)、遠くへ飛ぶ。
 種間交雑ができやすく、見分けるのは難しい。根はキンピラや味噌漬けなど食用になる。

(スコットランドを救った花)
 スコットランドでは、アザミを救国や武勇の花とし、王家の紋章や旗に描いて長い間尊重してきた(左図 は、スコットランドの紋章バッヂ)。
 これにはスコットランドに古くから伝わる伝説が大きくかかわっている。
 13世紀、ノルウエーの軍隊がスコットランド王・アレクサンダーの城に夜襲を掛けてきたときのこと。靴を脱いだ敵兵たちが城壁を乗り越え、次々と濠の中へ飛び降りた。しかし、濠の水は干上がり、アザミが一面に咲いていたという。棘を踏みつけた兵士の一人があまりの痛さに叫び声をあげると、これを聞いて敵の来襲に気が付いたスコットランド兵が一斉に飛び出し、ノルウエー軍を追い払うことができた。以来、アザミは勲章や貨幣の図柄としても盛んに使われるようになり、スコットランドの勇気と自立を象徴する花になったという。

三沢 充男


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