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令和4年10月20日(木)三遊亭竜楽独演会・内幸町ホール

今年の9月に肺がんで亡くなった円楽の弟子・竜楽が「浜野短髄」を竜楽流の演出で初めての口演

 今年の9月30日に肺がんのため死去した六代目三遊亭円楽の「しのぶ会」が、10月28日に
東京・半蔵門の国立演芸場で開かれた。一門の三遊亭鳳楽(75)、好楽(76)円蔵(76)ら
が思い出を語った。この「しのぶ会」で司会を務めたのが三遊亭竜楽(64)である。
 10月20日(木)、その竜楽の第268回独演会を千代田区立内幸町ホールで聞いた。中大出
身の真打ちで海外で現地語で落語を話す事でも有名だ。コロナ禍でオンラインでイタリの会場,と結
び語った事もあるそうだ。40年会も毎年応援している。
 午後6時45分開演だが、6時半頃には十数人のファンが並んでいた。40年会も12人が並ぶ。
 開口一番は円楽の最後の弟子・楽太。まだ20歳だが江戸の雰囲気を持った前座である。若い噺家
だが、長屋のご隠居との掛け合いを語っていた。彼は舞台袖の演目を書いた「めくり」も担当してい
た。
 次に竜楽の「蜘蛛駕籠」。街道筋に網を張って客を捕まえるので”蜘蛛助駕籠”との説や、流れる
雲のように気ままに街道を行き来するからなど諸説ある。この噺の頭は江戸・鈴ヶ森で客を待ってい
る駕籠かき2人が、数㍍先から塵取りを持ってゴミを捨てに来た前の茶屋の旦那に声を掛ける事から
始まる。その後も「へい、駕籠」と次ぎ次に通りがかりの客に声を掛けるが失敗の連続ーー。もう何
回も聞いたことがあるが、竜楽の話し方は流暢でスピード感がある。
 2番目は「堪忍袋」。夫婦喧嘩の理由の第一は”ささいなこと”だとか。笑福亭鶴瓶作の噺を江戸
落語に仕立ててある。長屋の夫婦が悪口を言い合い堪忍袋に詰めて行くが、これが評判となり、やが
て堪忍袋が破れてーーーとの噺。
 ここでお仲入り。15分の休憩タイム。後半は牧野健太郎の「お江戸浮世絵語り」から。竜楽パリ
公演に同行し、クールなフランス人から喝采を浴びた語り部である。大名が日本橋を渡る葛飾北斎の
浮世絵から、200年前の庶民の生活ぶりを解説。魚屋や八百屋の商売の様子
がよく分かった。
1枚の浮世絵から庶民の暮らしぶり探っていく喋りははじめて聞くが、ユニークだ。
 最後は人情噺の「浜野短髄」(はまののりゆき)。師匠の5代目円楽の18番だった演目。「ほぼ
型を変えることなく高座にかけてまいりましたが、今日初めて竜楽流の演出で公演いたします」と語
る。
 腰元彫り(刀剣の装飾品に彫刻をする職人)の名人・浜野短安が亡き後、息子の短髄が後を継いだ
が、息子は下手くそで作品が売れない。そこで短安の妻が息子を案じて観音彫を勧めるが、果たして
これが50両で売れるのかーーー。長い噺で約45分の独演。落語通の40年会の柳田紀秀君が公演
後に印象を話す。「元の噺は奥さんが死んでしまうが、竜楽流では生き返る。このあたりが新しい演
出だね。長い噺を休むことなく一気に話す。竜楽の気迫を感じたね」
 いい独演会だった。終演後に楽屋で師匠を囲んで記念撮影もした。今回も幹事役の小林明子さんに
日時の調整やチケットの手配などお世話になった。来年もよろしくね。
               (大泉)

        撮影;大泉清 


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