戻る | トップページへ戻る

〈寄稿文「紅葉の鎌倉を歩く」  大泉 清(法学部法律学科)

大仏と大泉さん  平成22年11月28日(日)

錦繍織りなす古都・鎌倉を歩く       

 歴史を刻んだ寺社の多い古都・鎌倉は11月下旬が紅葉の季節。

イロハカエデやイチョウなど
が織りなす景色に包まれた鎌倉を歩く

「第7回
四十歩行会・紅葉の鎌倉を歩く」は、柳谷紀秀君の案内で

11月28日(日)に行われた。参加者
は総勢16名。快晴、昼間

の予想最高気温は18度。
絶好のハイキング日和となった。

 午前10時、JR横須賀線「北鎌倉」駅のすぐ近くにある円覚寺前に集合。柳谷君からこ

の日の
ハイキングコースが載っている「鎌倉名所案内図」をもらう。字が小さいのが気にな

るが、書かれてい
る内容は市販のガイドブック以上に面白い。これを各自手にして「いざ、

出発!」

 最初は、臨済宗円覚寺派の大本山で鎌倉五山2位の円覚寺の山門をくぐる。弘安5年

(1282年)、
鎌倉幕府八代執権の北条時宗が、中国から名僧無学祖元を招き開山した

禅宗の古刹である(拝観料300円)。
土曜日や日曜日に座禅会が開催され「心の寺」と

しても
有名な寺である。

 下から眺めていると、首が痛くなるほど大きな山門を抜けて方丈へ。左側は見事な紅葉

である。
真っ赤に色づいたカエデと黄色のイチョウのコントラストが美しい。

参拝客もカメラとシャメの連続で記念撮影に夢中。筆者は一カ月ほど前にこの寺を訪ねて

いるが、
その時と比べると、人の数は3倍ほど多い。まさに“紅葉効果”だ。

  円覚寺前  円覚寺山門

 30分ほど境内を回った後、10時30分からこの日
のメインである「葛原が岡・大仏ハイ

キングコース」へ
向かう。このコースの入り口は鎌倉五山4位の浄智寺前。

 先を急いでいたので入山はしなかったが、「鎌倉名所案内図」には「当時のままの山門は禅

寺の風格があり、境内には古刹の
風格が漂う」とある。次はぜひ参拝したものだ、と思いなが

ハイキングコースに入った。桜の名所として知られる源氏山公園から銭洗弁財天を抜け、大

仏に降りる全長約3キロのコース
である。

上り始めは楽々だったが、10分もしないうちに急坂になった。ウォーキングシューズでの

ハイキングと気を緩めていたのが
間違いだった。なんと足場が組まれ、足をぐっと上げないと

上れない。それに山道の急坂には命綱のようなロープが張っ
てあるではないか。まるで、尾根

を越え、谷を渡って歩く感じ
である。遅れたり、ころぶといけないので、前を歩くメンバー

に必死で喰らいついていった。晩秋のハイキングなので家を出る時に女房が「寒さ対策として

下着は上下ともヒートトテック
(ユニクロ製)にしなさい」と言われて出てきたが、上るにつ

れて
汗がタラタラ。ブルゾンも脱いでしまった。鎌倉をなめてはいけない、と痛感。

やがて葛原岡神社に到着。平地なのでほっとした。ここで珍しい光景に出くわした。神主さ

んの神事があるとのことで、神社前まで
行きお祓いを受けたが、その後で参加していたお坊さ

んも玉串を
奏典。聞けば、この神社は神仏混淆とか。神主と僧侶が一緒に参加する神事は初め

て見た。これも、歴史の長い鎌倉の懐の深さかな。
この後、源氏山公園に向かうが、その途中

でとんでもないことが起
こった。大泉、冨里、坂野の3人が先頭を行く柳谷君チームとはぐれ

のだ。3人は源氏山公園の源頼朝像の前に出たが、柳谷君らの姿が見えない。回りを見渡す

と丁度、お弁当時間とあってハイキング客が
あちこちで昼食の真っ最中。「四十歩行会」のメ

ンバーの姿はない。
まさか、鎌倉の山で迷うとは夢にも思わなかったが、これは現実だ。前に

進むか、戻るか。どっちかに決めねばならない。
携帯電話はこんな時に便利だ。冨里善治君が

小林公司君と連絡をとり、
お互いの場所を確認した。柳谷チームは化粧坂切り通しの上にいる

との
こと。なんと“迷子”3人は化粧坂切り通しを下りずにまっすぐ歩いてきたことになる。

合流出来てひと安心した。

源氏山公園からは下り坂。といっても急な下りである。油断は出来ないので一歩一歩足元を

確かめながら
下りて銭洗弁天に。「お金を洗うとゼニがどんどん増える」というありがたい弁

天さんだ。この弁財天は洞窟
の中にある。皆さん、籠に銭を入れて洗っている。小銭を入れて

洗ったが
隣のひとは万札(それも2枚)を入れて洗っている。「この万札で宝くじを買います」

と言っている。使い方もいろいろあるもんだと思ったが、筆者もつられて千円札1枚だけ洗っ

てしまった。人間、欲には切りがないね。


 お昼の12時半頃、大仏に(拝観料200円)。ここも凄い人である。11月14日にAPE

C総会出席のために来日したオバマ米大統領が見学したことで、人気がいちだんと高まったよう

だ。オバマ大統領は6歳の時に訪ねたことがあり、鎌倉は思い出の地。その時に食べた抹茶味の

アイスキャンディーを今回も寺から振る舞われたとのことだ。我々が訪ねたのは秋ということも

あり、残念ながらこのアイスキャンディーはなかった。


 大仏から徒歩5分ほどの長谷寺に向かう(入山料300円)。「長谷観音」 の通称で親しま

れているご本尊は高さ18メートルもあり、日本で一番背の高い観音像である。この寺の紅葉が

美しい。錦織りなすという言葉にぴったりの
紅葉の美であった。山頂の見晴らし台からは、澄ん

だ空気のもとで鎌倉の町並みと海が見渡され、絶景の観光スポットである。境内のお食事処「海

光庵」で食事となったが、待つこと20分。石部君から「合席でもいいから、店の中に入れてく

れ」との声も飛んだ。寺の食事といえば蕎麦が一般的だが、夜の
親睦会の場所は蕎麦屋というこ

となので、ほぼ全員がカレーを注文。850円だったが特殊な味で、「寺のカレーはヘルシーな

味か」と言い聞かせた。

長谷寺を出たのが午後2時過ぎ。当初予定されていた鎌倉文学館はパスして由比ヶ浜海岸通りから、

JR鎌倉駅を経て鶴岡八幡宮へ。筆者は生家が神社ということもあり、鶴岡八幡宮の参拝は念を込

めてお祈りした。石段の左側に昨年の強風で倒れ、根元が残った大イチョウからは緑の葉が出てい

た。イチョウの葉は秋には黄色になるものだが、黄色の葉ではない。これも大イチョウのもつ生命

力かと驚いた。鶴岡八幡宮は若い女性の間でパワースポットとしても人気を集めているが、目の前

でこの生命力を見ると、なんとなく納得してしまう。

参拝の後は鎌倉幕府を開いた源頼朝の墓に。最近、作家や有名人のお墓を訪ねる「墓マイラー」が

ブームになっているが、頼朝の墓石の回りにも大勢の人だ。地下の頼朝もどんな想いなのか?この

近くには大蔵幕府の跡地(現在は小学校)もあり、鎌倉の静かなたたずまいが続く。

午後4時頃に小町通りにある蕎麦と創作和食の「峰本」に着く。ここが今回のハイキングコースの

最終地であり、懇親会の場所である。

 案内役を務めてくれた柳谷君の「お疲れ様」の後、佐々木幸男会長の挨拶で懇親会開始。5時間

ほど歩いた後なのでビールがうまい。これもハイキング後の至福のひと時だ。鎌倉の山々が漆黒の

影を描き、創業以来80年も続く老舗の蕎麦店で美酒に酔い、旬の和食を味わう。2時間ほどの懇

親会は談論風発で盛り上がった。駅前の豊島屋で鎌倉名物「鳩サブレー」を買い、午後6時20分

頃の横須賀線に乗り、家路についた。柳谷君、一日の案内ご苦労さまでした。
   
東京に向かう横須賀線の中で、久保田万太郎の名句がよみがえってきた。

    わが胸に 住む人ひとり 冬の梅
          
季節はもうすぐ冬に向かう。梅の薫る鎌倉も歩きたいものだ。 大泉 清

<参加者>(敬称略)小林公司、古谷泰久、新井孚、池田好雄、冨里善治、大泉清、西山勝凱、
     石部紀男・恵子夫妻、川島洋子、川島憲司、山田尚範、新井嘉昭、柳谷紀秀、
     佐々木幸男、坂野好丕 以上の16名


戻る | トップページへ戻る