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会員だより —歌代雄七—

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2026年3月
  随想132 金

 金(ゴールド)と言えば金持ちが所有するものとのイメージが強かったが、昨今は市井の人々が小遣いを積み立てるようにして、1か月数グラムずつ購入するケースが多くなってきた。筆者には遠い話題と思っていたが、最近、積立購入の話を頂き身近に感じるようになってきた。就いては、今月のテーマは、その「金」にしてみよう。

 扨て、その金はいつ頃からあったのだろうか。
 ご存じの通り、紀元前3000年前から3000年程続いた古代エジプトのファラオ(王)の墓から金の装飾品が見つかっている。一方、現在発見された中で世界最古の金貨は、紀元前670年ごろに誕生している。鋳造されたのは現在のトルコ西部のリディア王国で、メソポタミア時代に栄えたヨーロッパとアジアを繋ぐアナトリア半島リュディアで発見された。その地は現在のトルコ西部で、貨幣は金銀合金の「エレクトロン貨」と呼ばれる直径1cm強の円形、表面には王の象徴であるライオンの顔が描かれていた。

 時代が下って、現在の金事情は、となると値上げに次ぐ値上げ状態だ。
 その背景は、各国特に新興国の中央銀行が金買いに走っている。勿論、個人の買いもあるが、中国、ロシアの中央銀行の買いは尋常ではない。この現象は資本主義圏とのデカップリングも大きく影響している。加えて米国の債務が積み上がり、ドルへの信認が揺らいでいることから、ドル資産から金へ乗り換える各国の中央銀行が増えているからでもある。
 更に供給サイドは南アフリカなどを中心に毎年、世界の鉱山の生産量が3千トン前後で推移していることが金価格を押し上げる要因となっている。つまり、需給バランスに依る値上がりだ。もう一つバランスの崩れの要因は、今まで金に関心の薄かった富裕層を含めた米国人が自国通貨ドルに対する意識変化から、金貨や地金を購入することが金高騰要因だ。因みに、「地上在庫」としては変わらないが、リサイクル供給力は毎年1,200トン前後だ。
 では、地球上にどのくらいの金が出回っているのだろうか、つまり地上在庫としては、約22万トンだ。この数値を用途別に仕分けると宝飾品で45%、投資分野で22%、中央銀行保有が17%、その他で15%だ。

 扨て、黄金と言えばエジプトで発掘された「ツタンカーメンの黄金のマスク」が、つとに有名だが、製作されたのが紀元前1300年で、現在はエジプトの国宝とされている。それは23金で作られ、重さは高々約11kgだがその「価値は300兆円」とされている。
 一方、その王が眠っていた棺は110kgの黄金が使われていたという。さもしい筆者は、ついつい金額に換算したくなる。昨今の金価格はグラム当たり2万7千円超で弾くと、棺だけで単純計算では約30億円超。盗掘者の心理が分からないわけではないが……。
 因みに、2000年超ほど前の日本は弥生時代、欧州では古代ローマ帝国だった。
 その時代、元老院などを含めた高級官僚を始め限られた人々が着用した外出着があった。肩から半身をまとうもので名称は「トガ」と称し、金1オンス(約28g)に相当したそうだ。一方、現在の日本に於いてハイソな人々が高級紳士服店で仕立てる服は約50万円ほど、欧米ではその5割アップと仄聞した。現在の金価格グラム2万7千円前後を考えれば、その約80万円は1オンス前後となる。ここ数年、金価格暴騰の事実はあるが、金の価格は時代を映す「価値」のバロメーターであり、パラレルなのだろうか!

 扨て、金塊を側に置くことも、目にすることもない筆者は「金」とは全く縁がない。その昔ご近所にネックレス、腕輪更にネクタイピンなど金色で身を固めていた成金趣味のおじさんがいた。何とも軽薄な方との思いで眺めていた。そうそう、更にそのおじさん、口を開ければ上下左右ともに、奥から3番目か4番目辺りまで金歯で固めていた。まるで獅子舞の獅子が安っぽい金で固めたようなお人だった。今思えば、その方の深層心理が知りたいと強く思うところだ。そういえば、筆者30代の頃、歯医者の勧めで奥歯の1本、金を被せたことがあった。そうだ、次の年金までお金に不自由をしたら、この金歯にご活躍願うことにしようか……。

2026年2月
  随想131 格言

 戒めや処世訓、金言、箴言など人生の真理を簡潔にまとめたものを格言と称しているが、我々の年齢ではこれらを体現し、またこれらを周りの人に宣い、諭す年齢領域となった。しかし、それはとかく独善的となり、これらを聞かされた相手が如何なる心境で聞いたかを確認することなく……。

 今回のテーマはその格言だが、人生の酸いも甘いも十分噛分けたあなたには一般的な格言を示すことは大変失礼なこととなる。就いては、老後のスリルと頭のトレーニングとなる「株の売買」を中心とした金融市場での格言をお示ししよう。今月の小紙をご覧の方々で投資を控えている方には、役に立ちませんので、今月は飛ばして、来月のテーマをお待ちください。
 ここから改めて読み始める方は、投資で修羅場を歩んでこられた方々でしょう。
 昔から伝わる金融市場での「格言」は、機械による高速売買が増えた今日でも、通底するものがある。相場のリスク要因はいつの世でも意識すべきであろうし、時代を潜り抜けてきたこれら格言は、人生を歩むうえでも、けだし至言だろう。

〇 人が行く裏に道あり、花の山
 多くの人が行き交う道ではなく、人があまり行かない道にこそ目的の「花」がある。と言う意味だが、人気の株は最早「乗る」には時期が遅いとも解釈できようか。その周辺にはこれから伸びる株があるよ! それを探せと……。 〇 卵は一つのかごに盛るな
 投資資金を一点集中するのではなく、複数の対象に分散することが大事だとの教えだ。例えば株式だけではなく、債券、金、不動産などリスク分散を為して政治、経済の環境変化に対応できる環境づくりが大事だとのことだ。 〇 「もう」はまだなり、「まだ」はもうなり
 上昇相場、「まだ上がると思っていても「もう売り時」かもしれず、下落相場で「もう底値」だと思っても「まだ下がる」かもしれない。同じような意味のことを、米国の著名な投資家ウォーレン・バフェット氏は「他者が貪欲なときに恐怖心を抱き、他者が恐怖心を抱いているときに貪欲であれ」と説いている。
〇 頭と尻尾はくれてやれ
 相場のピークやボトムを予想して売買に成功し続けるのは、不可能に近いと言われている。つまり相場の最も安い水準や高い水準を確認してから、その水準から少し高くなったり、安くなったところで売り買いするという格言。
〇 二度に買うべし、二度に売るべし
 一括投資で大きなリスクを背負うのではなく、同一銘柄でも様子を見つつ分散して購入したり、販売をすることの慎重さが必要だとの意味だ。
〇 利食い急ぐな、損急げ
 相場が上昇する中で早めに利益を確定すると利幅が少なくなるため、急ぐ必要はない。一方、下落相場では損失を早めに確定しないと損失が拡大する恐れがある。つまり利益を最大化し、損失を最小化することの意味だが、「そんなことは分かちゃいるけど!!」の世界だが。

 他にも投資判断の助けになる格言はある。
 〇 遠くのものは避けよ。
 〇 眠られぬ株は持つな。
 〇 買いは技術、売りは芸術
 〇 相場は明日もある
 〇 相場は相場に聞け
 〇 落ちるナイフは掴むな。
等などだが、投資家の貴方には意味はお分かりのことだろう。

 扨て、筆者の株式投資歴は半世紀超。最初は自社の持ち株会で株に触れて、1年と経ずに種々の株に手を染め、爾来この80歳まで続いている。今後も、三途の川を渡りながらも、株の情報を集めることに余念が無いだろう。
 扨てさて、筆者の最大の失敗は老年に差し掛かっての出向時、退職金を受給した。その内の半分は企業年金積み立てに回した。残りは、当時上場を果たした米国システムソフト会社の日本法人の株に、全額をつぎ込んだ。
その後10年程過ぎた時点では株価は10分の1。そのことを当てこすってか、今でも女房殿は時折「一生懸命働いたのに、退職金は少なかったわね!!」とチクリと、宣う。
 針のむしろとは、こうした場面を指すのだろうか。
 「チクリ」の度に、体が覚えてしまったのか、自然に頸が垂れ、一陣の風が過ぎるのを待つ自分が、何とも情けない。

2026年1月
  随想130 和牛

 街中を歩いていたら、どこからともなく牛肉の香ばしい匂いが風に乗って鼻孔をくすぐってきた。正月は和食の月だろうと思いつつも、あまりにも単純だが、今夜の主菜は牛肉と決め、連れと一緒にスーパーに飛び込んだ。陳列棚には、黒毛和牛、国産牛、輸入牛肉といろいろ並んでいる。まさにオーバーに言えば、光彩奪目。
 ライトが当たるそれぞれは、わたしを選んでとばかりに輝いている。
 幾つかをチョイスし、タレ、野菜などを併せカートに入れてレジに向かう。
 ……そうだ、今月の随想テーマは「牛肉」としよう。

 扨てさて、そもそも和牛とは何だろうか。
 もともとは日本の牛は、農耕用だったが、1950年代以降に肉用として、肉質などに優れた種牛を遺伝的に選抜し、肉が霜降りになりやすいように餌を工夫してつくりあげた日本の誇るべき「逸品」だ。1960年代から雄牛の精液を冷凍して雌牛に受精させる方法が始まり現在まで続いている。また80年代、能力の高い父牛を選んで品種改良を進めてきた。更に、2016年以降は遺伝子分析も活用して、種牛を選ぶようになった。つまりそれは、黒毛和種などの4種類とそれらをかけ合わせてできた交雑種のことだ。
 一方、国産牛とは和牛とは別のグループ分けで、日本で育った牛のことだ。雌が牛乳を出すホルスタインの雄やホルスタインと和牛の交雑種を「国産牛」と表示することが多いようだ。因みに和牛には他に褐毛和種、日本短角種、無角和種がある。その和牛の触感の特徴は、食べた後に口に残る脂ぽっさがあまり残らないのが特徴だ。それは脂肪の成分が口に入れると体温でさっと溶けるからだ。
 日本で肉を供給する肉用牛の飼育頭数の95%以上が黒毛和種だ。これほど多く飼われている理由は、肉の中に脂肪がたまりやすく、肉が柔らかくなっているからだ。それは赤い筋肉の中に白い脂肪が散らばっている、所謂「霜降り」状態をいう。この霜降りは和牛、特に黒毛和牛の特徴だ。
 外国の牛は、品種改良や飼育方法の工夫で脂肪を多くしようとすると皮下脂肪までが増え、食べられる部分が少なくなる。その点、黒毛和種は霜降りを多くしても、皮下脂肪が厚くならない、世界的にも珍しい特性をもつ。 そうした中で、有名な種牛としては、兵庫県で生まれた「安福号」を岐阜県が1981年に購入して、93年に病気で死ぬまでに約4万頭の子牛を残したとされている。
 霜降りを多くするためには、たんぱく質の多い餌や稲わらなどビタミンAの少ない餌を与えるとサシが入りやすいことは研究成果として知られているが、機序はまだわかっていない。
 因みに、牛の体重は人間の約10倍、その体重を支える4本の脚が地表面に接している面積は、ヒトの大人の両足の靴裏とほぼ同じだと言われている。

 世界には、牛肉料理は多種多様だ。
 牛丼、すき焼き、牛鍋、しゃぶしゃぶ、ステーキ、ボルシチ、ローストビーフ、ビーフシチュー、ビーフストロガノフなどなどいろいろだ。
 毎日これらの料理を食していたら、心臓疾患系の罹患は間違いないだろう。
 筆者は毎日でもいいのだが、破産を覚悟せねばならぬからことから、1か月のうち牛肉料理は数回だ。
 なのに、現在、心臓疾患を患っている。家徒四壁の中で一汁一菜の日常、何故こんな不条理がまかり通るのだろうか。
 因みに、日本での死因はご案内の通りがんが1位だが、2位は先進国ではトップの心臓疾患だ。日本でも近いうちに心臓病がトップに躍り出るのは間違いない。